我々が日常生活で使っている苗字は現在、30万種類ほどあるといわれていますが、この苗字の由来を知るには、いくつかの方法があります。
まず苗字が訓読みかどうかという分類です。訓(くん)読みとは日本古来の大和言葉のことで、古い地名はほぼすべてが大和言葉由来の訓読みです。
そのため地名から発祥した苗字も当然ながら訓読みとなります。苗字のうち80%以上は地名に由来する訓読み苗字であることが分かっています。地名由来であれば、その地名の語源を知れば、それが苗字の由来ということになり、大抵はご先祖がその地名に住み着いたことにより、その地名を苗字として用いました。ちなみにファミリーネームは名字とも書きます。名字とは中世に用いられた言葉で、ある土地を支配した者がその地名を家名として用いたさいに使いました。その土地を名字の地といい、その家は名字の地の領主だったわけです。
しかし、時代が下ると、その土地の領主ではなく、ただ住み着いた者も「みょうじ」を名乗るようになりました。殿様から「みょうじ」を下賜された者もあれば、名家の名字を無断で名乗るような者も現れました。そうなると、これらの「みょうじ」を中世の名字という言葉では表現しきれなくなってしまったのです。そこで中世後期以降、歴史家は名字に代わって「子孫」「血が同じく」「根っこが同じ」という意味の苗を用いて、苗字という言葉を使うようになりました。江戸時代の公式な記録には苗字しか出できません。明治3年(1870)に明治政府が出したお触れも名字ではなく、「平民苗字許可令」です。
歴史家の多くは苗字を使用している
ところが、明治以降、名字の使用が復活し、法律用語では氏が使われるようになりました。そして戦後に苗の「みょう」という読みが常用漢字表から削除されると、名字と書くのが正しいという風潮が一気に広まってしまったのです。歴史的には現在の我々の「みょうじ」は苗字と表記するのが正しいのです。
アカデミックな研究者である豊田武氏(東北大学名誉教授)は『苗字の歴史』、坂田聡氏(中央大学教授)は『苗字と名前の歴史』、渡辺三男氏(駒澤大学名誉教授)は『日本の苗字』、奥富敬之氏(日本医科大学名誉教授)は『苗字と名前を知る事典』、大藤修氏(東北大学名誉教授)は『日本人の姓・苗字・名前―人名に刻まれた歴史』と、歴史家が「みょうじ」を専門的に解説したときには、名字と苗字の違いを踏まえて苗字をよく使用していることが分かります。
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