苗字のルーツ、名字との違い、そして「佐藤さん」は本当に親戚?

「私の苗字って、いつ決まったの?」「知り合いに同じ苗字の人が何人もいるけど、親戚なのかな?」
だれしも一度は疑問に思った内容ではないでしょうか?
今回は、苗字にまつわるよくある疑問を、歴史的背景とともにひも解いていきましょう。

苗字が正式に決まったのは、明治時代から私たちが現在使っている苗字が法的に確定したのは、明治5年(1872年)に作られた「壬申戸籍」においてです。
それ以前も、武家や公家などは苗字を名乗っていましたし、庶民も私的には使っていたとされる事例も近年の研究で明らかになってきています。

しかし、当時の苗字は今のように「法的な身分証明」として固定されたものではなく、変更も自由なものでした。
現在のような「公的な名前」として、変更も制限されるようになったのは壬申戸籍からなのです。

●同じ苗字の人はみんな親戚なのか?
「佐藤さんって多いですよね。同じ苗字の人はみんな親戚なんでしょうか?」という問いもよく聞かれます。
佐藤や鈴木といった日本でも有数の「大姓(たいせい)」のルーツには諸説あり、たとえば「佐藤」という苗字に関しては以下のような由来が語られています。

・平安後期の藤原公清が「左衛門尉(さえもんのじょう)」に任じられ、「左」と「藤」を合わせて「左藤」、のちに人偏を加えて「佐藤」にしたという説(これは丹羽基二博士による仮説)。
・栃木県佐野市に本拠を置く藤原氏が「佐野+藤」で「佐藤」とした説。
・新潟県の佐渡島にいた藤原氏が「佐渡+藤」で「佐藤」としたという説。

これらの説の多くは仮説であり、実証的な裏付けに乏しいのが現状です。
つまり、現時点の研究水準では、同じ「佐藤さん」がすべて同族であるかどうかを明確にすることは極めて難しいといえます。

●苗字の多い・少ないには理由がある
苗字の分布にも歴史があります。
人口学の観点から見ると、古くからある苗字ほど子孫が増えやすく、結果的に多くの人がその苗字を名乗るようになったと考えられています。
また、徳川家やその親族のように、苗字の使用に厳しい制限があった一族もあります。
このように「由緒ある家」には名乗りに制限がかけられ、一族でも自由に名乗ることができなかったのです。
そのほか、アイヌ民族、琉球出身者、帰化した方などの苗字も比較的少数にとどまる傾向があります。

●苗字・名字・氏・姓の違いは?
現代ではあまり区別されませんが、本来「苗字」「名字」「氏」「姓」にはそれぞれ意味の違いがあります。

・名字:平安末期に地名から生まれたもので、鎌倉〜室町時代にかけてファミリーネームとして使われていました。
・苗字:江戸時代以降に広まった言葉で、「血を同じくする者」という意味が含まれており、より広い概念を指します。
・氏・姓:主に戸籍上の表記や、法的書類で使われる言葉です。

文部科学省やメディアでは「名字」、法務省では「氏」が用いられるなど、使い方に違いはありますが、今日ではどれを使っても大きな誤りではありません。