古い除籍謄本や戸籍を見ていると、現代ではあまり使われない言葉や、空欄の多い記載に戸惑うこともあると思います。
ここでは、家系図作成や戸籍調査の中でよくいただく「戸籍上の表記に関する質問」にお答えします。
❓Q:古い除籍を見ると「養嗣子」と書かれています。養子とは違うのですか?
✅ A:家督相続を目的とした“特別な養子”です。
「養嗣子(ようしし)」とは、その家の家督(かとく)=家の跡継ぎとして迎えられた養子のことを指します。
養家にとってはとても重要な存在で、
多くの場合、実の娘と養嗣子を結婚させ、夫婦として家を継がせることが一般的でした。
一方、単に「養子」「養女」と記載されている場合は、
家督を継ぐことを目的としない**一般的な“養い子”**としての意味合いが強いといえます。
❓Q:古い戸籍を見ると、母親の欄が空白になっています。母親が分からないということですか?
✅ A:いいえ、多くの場合は制度上の理由によるものです。
戸籍に母親の名前を記載する欄が設けられたのは、明治31年(1898年)式戸籍からです。
それ以前の:
明治5年(1872年)式戸籍
明治19年(1886年)式戸籍
には、母親を記載する欄が存在しておらず、
仮に母親がすでに亡くなっていた場合、戸籍のどこにも名前が載らないというケースが発生しました。
明治31年式戸籍でも母親の欄が空欄になっている場合、
その多くは「戸籍記載前に母親が死亡していたため」であり、
「母親が不明である」ということを意味しているわけではありません。
❓Q:長男、三男、五男、二女と記載されていますが、二男や四男、長女がいません。
✅ A:戸籍の書き換え時に除かれた可能性があります。
戸籍は以下のような場合に新たに書き換えられます
・家督相続によって戸主が変わったとき
・本籍地を変更(転籍)したとき
・戸籍法の改正で新しい書式が施行されたとき
この際、すでに死亡した方、他家へ嫁いだ方、養子や養女に出た方などは、
新しい戸籍には引き継がれない仕組みになっていました。
そのため、中間の兄弟姉妹が記載されていない=存在しなかったとは限らず、
より古い戸籍をさかのぼることで、その人物の記録を確認できる可能性があります。
❓Q:古い戸籍に「廃家して実家に戻った」とあります。廃家とは何ですか?
✅ A:分家した家を解消して、元の家に戻ることを意味します。
「廃家(はいか)」とは、分家して独立した戸籍を何らかの理由で廃止し、元の戸籍に復帰することを指します。
たとえば、
・次男として分家したが、長男(本家)が後継ぎなく亡くなったため、実家を継ぐ必要が生じた
・分家したが、結婚せず独立生活が続かなかったため、廃家して実家に戻った
といったケースがあります。
現代ではあまり聞き慣れない言葉ですが、当時の家制度においては柔軟に家の継承や復帰が行われていたことがわかります。
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