「老舗(しにせ)」は日本だけの現象ではありませんが、数字で見ると日本は突出しています。2008年に韓国銀行が41か国を対象に調べたところ、創業200年以上の企業は世界で5,586社。そのうち日本が3,146社(56%)で最多、次いでドイツ837社、オランダ222社、フランス196社でした。さらに100年以上の企業の89%は従業員300人未満の中小企業です。
100年企業の厚みも日本は圧倒的です。帝国データバンクの集計によれば、100年以上続く企業は3万7,550社(2022年3月時点)。国際比較でも頭ひとつ抜けたボリュームで、日本の地域経済を下支えしている存在と言えるでしょう。
日本の老舗の顔ぶれは、旅館、酒蔵、和菓子、仏具、建築など、地域と生活文化に密着した業種が多いのが特徴です。実際、長寿企業の分布を見ると、旅館や酒蔵が目立ちます。
一方、欧州ではドイツの醸造・ワインを筆頭に、造幣・金融・レストランなど、都市の商業発展とともに歩んだ業種が古くから存続しています。
なぜ日本に老舗が多いのか
家業=“預かり物”の発想
自社を先祖から受け継いだ“のれん”として守り、次世代に引き渡す文化が根強い。
数として現れているのが前述の200年企業の半数超が日本という事実です。
地域密着×ニッチ特化
観光や地場産業と結びついた小規模・分散型の企業群が、景気サイクルの波を分散。
長寿企業の大半が中小という構造は、この強みと裏腹の関係にあります。
“類型”の違い
日本は生活文化(もてなし・食・祭祀)に根差す業種が多く、欧州は都市商業や酒類文化の蓄積が中心―という産業ポートフォリオの差が、そのまま存続形態の差になっています。
長寿企業が多い日本でも、2024年は倒産件数が11年ぶりに1万件を超えるなど、コスト高と人手不足の逆風が強まっています。老舗にとっても例外ではなく、のれんと収益モデルの再設計を同時に進める局面です。
日本の老舗企業の勝ち筋は、
伝統×再定義:創業の使命を現代の価値に翻訳(例:和の体験価値、サステナブル素材、発酵・健康機能の科学的訴求)。
小さな強みの束ね直し:中小の“点”を、地域連携やデジタルで“面”へ(共同EC、越境販路、体験観光)。
二層の承継:**家訓(理念)と事業(収益)**を別トラックで設計。経営は外部・親族併用、人材はプロ採用×家業教育。
データは「日本の老舗が“数”で世界をリードしている」ことを示します。次の100年に向けては、理念の継承とモデルの更新を両立させること。これが、日本の老舗が生き残るための王道です。
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5代目製本業経営者。体を動かす事が趣味でジムに週5回通ってます。
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