300年前までたどれたら立派!──「過去帳」の活用法

家系図を作成する際、どこまで遡ることができるのか、、、
これは多くの方が最初に抱く疑問です。
実際のところ、過去帳を活用すれば、300年前=10代ほど前の先祖までたどることができる可能性があります。

今回は、家系調査における「過去帳」の重要性と、調査の現実的な範囲についてお話しします。

■戦国の混乱を経て、人々が“祈る”ようになった
戦国時代の終わりとともに、日本社会は徐々に安定し、人々の生活にも余裕が生まれました。
その結果、亡くなった家族や先祖の冥福を静かに祈る文化が定着していきます。
その祈りのかたちとして、過去帳の記録が一般庶民にも広がっていったのです。

■過去帳が記す「命日」はもっとも確かな先祖情報
過去帳の最大の特徴は、「その人が亡くなった日」を記録するという点です。
つまり、亡くなるたびに記録されるものであり、先祖の実在を確かめるうえで非常に信頼性が高い資料です。

いくら美化された伝承や「日赤絵図(家系図)」があっても、命日だけはごまかしようがない——
それが過去帳の価値なのです。

■調査の現実的な限界は「元禄」から「寛永」ごろ
筆者の実地調査でもっとも多かったのは元禄時代(約230年前)の記録。
中には寛永年間(約300年前)の過去帳もありましたが、それはかなり例外的です。

言い換えれば、300年前まで先祖をさかのぼることができれば、それは立派な成果だと言えるでしょう。
この年代に相当するのが、だいたい10代前、つまり高祖父のさらに5~6代前にあたります。

■家の過去帳と寺の過去帳、両方照らし合わせて活用を
家に伝わる過去帳には、戒名と命日が記載されているのが一般的ですが、俗名や続柄が省略されていることもあります。
そこで重要になるのが、寺に保管されている「団家(だんか)全体の過去帳」です。

寺の過去帳には、命日だけでなく俗名や家の位置づけが記されていることがあり、個人の過去帳と照らし合わせることで一族の系譜が見えてくるのです。
特に、治安の良かった地域や寺では、年代順に丁寧に記載された古い過去帳が残されているケースもあります。

そして、過去帳はその命日の記録という、家族の「人生の終点」を刻んだ貴重な資料。
300年を越えていなくても、それだけの長い時間を見つめることができる記録を手にしているというだけで、十分に誇らしいことではないでしょうか。