国宝社を見学しました。
つつつガーデン実行委員会のメンバーで、板橋区に工場を持つ製本会社・国宝社を見学しました。
国宝社が「国宝堂」の名前で製本をはじめたのは大正8年。来年には創業100年を迎えます。国宝堂の名前は和綴じノートのブランド名として受け継がれており、つつつガーデンにも出店していただいています。
板橋工場は昭和28年に稼働を開始しました。今の建物は昭和49年から使われている3階建て。印刷工場から運ばれてきた印刷済みの紙は、1階のトラックバースで降ろされエレベーターで3階へ運ばれます。
「断裁から折り、綴じといった製本全般から着色、折り込みまで、印刷以外はすべてやっています」と話すのは、案内していただいた木村さん。木村さんはつつつガーデン実行委員会のメンバーでもあります。
3階に運ばれた紙は断裁機で決められた大きさに切られたあと、1枚ずつ折られていきます。紙1枚にはおおむね8ページから32ページぶんが印刷されており、これを決められた通りに折るとページの順番がきちんと並びます。折られたものは
「折丁」といいます。
次に、折丁を順番通りに重ねていきます。これを「丁合」といいます。丁合機にはカメラがついており、ページの順番が正しいかどうかが1部ずつチェックされています。1冊分の丁合が完了するまで、わずか数秒
丁合されたものは2階に運ばれ、並べられて圧力を加えられたあと、背に糊を塗られて綴じられます。糸やホチキスなどを使わずに糊で綴じた本を「無線綴じ」といい、なかでも文庫本のような厚い表紙をもたない本を「仮製」といいます。綴じるとようやく本らしくなってきました。あとは表紙を張り付け、余分な部分を断裁します。
すさまじい切れ味をもつこの断裁機の刃は毎日のように交換して、研ぎ屋さんに研いでもらうそうです。日本の刃物文化も奥が深い。
2階には特殊な着色機もあり、本の裁断面(天・小口・地)に色を着けることができます。「ここに色を付ける特許機械が国宝社にはあります」(木村さん)だそうで、裁断面に色がついた本を見たらここの工場を出た本かもしれません。
注文票などを折り込み、最後にカバーをかければ完成です。完成した本はふたたび1階へ運ばれ、取次店などに出荷されていきます。
「紙は生きものです。紙質や印刷のインクの状態、その日の気温や湿度によって綴じ具合や糊の配合を変えるんです。職人さんの腕の見せ所ですね」と木村さん。1冊の本は、書き手から編集者、デザイナー、紙メーカーにインクメーカー、印刷工場、それを運ぶ物流業者と、多くの人の手を経て出来上がります。100年にわたってその一端を担ってこられた、それがなによりの誇りだといいます。
そんな思いを胸に、木村さんが作り上げたのが縦型の和綴じノート「かべかけ帖」。国宝堂ブランドの製品のひとつで、和綴じの良さを伝えられればと考えた社員が発案したそうです。どこにでも下げておけるコンパクトなメモ帳で、和柄の表紙もおしゃれ。腰にぶら下げれば気分は番頭さん? 板橋製品技術大賞・審査員賞も受賞しています。
出版という文化の広がりは、単に本をつくるだけにとどまりません。だからこそ、1冊のほんを生みだす、その営みがこの先も永劫つづくことを願ってやみません。
投稿者プロフィール
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5代目製本業経営者。体を動かす事が趣味でジムに週5回通ってます。
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