日本の国歌『君が代』には、意外と知られていない歴史があります。
実は、初代『君が代』の作曲者はイギリス人だったのです。
初代『君が代』の誕生と改変
明治3年(1870年)、イギリス陸軍軍楽隊長の ジョン・ウィリアム・フェントン(J. W. Fenton) によって、最初の『君が代』が作曲されました。
しかし、この旋律は日本人の感性には合わず、後に作り直されることになります。
明治13年(1880年)、宮内省式部寮雅楽課によって新たに作曲された『君が代』が宮城内で初演され、現在まで歌い継がれている国歌となりました。
歌詞は『古今和歌集』第7巻・賀歌の部に記載されている「よみ人しらず」の和歌が元になっています。
以下が原文と現代語訳です。
原文:
我が君は 千世に八千代に さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで
現代語訳:
あなた様が千代も八千代も末永くお元気でありますように。
小さな石が長い年月を経て大きな岩となり、苔がむすほどに。
この和歌が国歌の歌詞に採用されたことで、『君が代』は世界で最も古い国歌(和歌としては1,000年以上、国歌としては100年以上)となり、ギネスブックにも認定されています。『君が代』の歌詞はわずか 32文字。
これは世界の国歌の中で最も短く、和歌独特の五・七・五・七・七の形式がそのまま使われています。
短いながらも、深い願いや情景が凝縮されており、日本独自の美意識が表れています。
この落ち着いた旋律は、他国の国歌のように勇ましい行進曲調とは異なり、日本人の精神性や自然観を象徴しています。
歌詞に登場する「さざれ石の巌となりて」も、時間の流れと自然の力を尊ぶ日本文化を表しています。
『君が代』は、その旋律と歌詞の美しさから、ドイツで行われた世界国歌評定会で第1位の秀歌に選ばれたこともあります。
『君が代』は、単なる国歌ではなく、千年以上受け継がれてきた日本の心を歌い上げたものです。
静かな旋律と短い歌詞の中に、長寿と繁栄への祈り、そして日本文化の奥深さが凝縮されています。
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